サッカーにおける言葉の1つに「プレーモデル」というものが存在します。
ざっくり表現すると「どんなサッカーをしたいか」です。
実際は、選手がプレーをする際の指針というだけではなく、ピッチ外での振る舞いや行動など、人間性も含めた「どんなチーム(選手)でありたいか」という考え方も大きく影響してきます。
例えば、僕の場合は「自立」「成長」「笑顔」などですし、他にも「競争」「実力」「勝利」など、言葉によってチームのイメージが作られていきます。
こういった自分が理想とするイメージや、周りからのイメージ、所属する選手の特徴などを総合的に勘案して「どんなサッカーをしたいか」というプレーモデルが作られます。
つまり環境の変化に応じて、プレーモデルも変化していく可能性があるということを覚えておいてください。
では、具体的に局面ごとのプレーモデルを考えてみましょう。
プレーの指針
サッカーは全部で4つの局面に分けられます。
自分たちがボールを保持している「攻撃」と保持していない「守備」そして、その2つの局面が切り替わる「攻→守」と「守→攻」の4つでした。
攻撃
自分たちがボールを保持しているときに、どんな攻撃をしたいですか?
いきなりだとプレーモデルを理解するのは難しいと思うので、仮想のチームを例にして考えてみましょう。
チームA
日本のとある田舎町にある中学校のサッカー部。
そこへ赴任してきたサッカーとバルセロナが大好きな中堅教師。
ある日校長から呼び出されて「保護者も他の職員も、サッカー部のために最大限の協力をする。何が何でも結果を残して、この学校を有名にしてくれ」と激励を受けたものの、選手の中には中学校からサッカーを始めた子もおり、技術的なレベルはお世辞にも高いといえない状態。
ただ、足は遅いが身体も強く、身長も高いスペシャルな選手(U-15日本代表候補)が1人いる。
じゃあ、このチームでどうやって攻撃しますか?
というのを、攻撃の各フェーズに沿って考えていきます。
どんな「シュート」か。
まずは、身長の高さを生かしてヘディングシュートをしたい。
どんな「フィニッシュ」か。
ヘディングシュートに繋げるため、オフェンシブサードのサイドから、ゴール前にクロスを上げたい。
どうやって「前進」するか。
本来は、バルセロナのようにショートパスで前進していきたいが、現状では難しいので、できるだけロングボールを使って前進する。
これは、選手と周囲の環境を軸に考えた攻撃のプレーモデルになります(実際はもう少し細かく設定します)が、自分の理想を軸にプレーモデルを設定してもかまいません。
「俺はバルセロナを愛してやまない。目指すはあの姿だ」というのであれば、その設定したプレーモデル「どんなサッカーがしたいか」に応じて必要なトレーニングを行えばいいのです。
攻→守
自分たちがボールを奪われた瞬間に、どうやってボールを奪い返すかです。
チームAであれば「ボールの近くにいる選手2人で奪いに行く」とか「1人が奪いに行って、もう1人がインターセプトする」など、大きな枠で設定することもできますし、奪った場所や状況に応じて細かく設定することができます。
しかし、プレーモデルとは「どうやってボールを奪いたいか」という方針のことなので、細部まで決めすぎてしまうと、選手の判断を奪ってしまうことになりかねないので、注意が必要です。
ボールを奪えなかったら「ゴールを守る」という守備の部分に繋がっていきます。
守備
ボールを奪えなかった場合に、どうやってゴールを守るかになります。
チームAで考えると、技術はないけど、走れる選手が多いから、ボールを持っている選手に対して、必ず1人はプレッシャーをかける。
どうやって「フィニッシュを防ぐ」か。
小柄なディフェンスが多いので、ハイボールを蹴らせない。
どうやって「シュートを打たせない」か。
シュートを打たせないとは、相手に触らせないということです。
ハイボールに対してはジャンプさせない。集中力と勇気を持ってクリアする。
では、こうやってゴールを守りながら、チャンスがあってボールを奪ったとしましょう。
守→攻
ボールを奪った際に、どうやって奪われずにプレーしたいかです。
チームAだと、技術的な能力を考えて、味方のサポートを得て保持するよりも、奪い返される前に前線へロングボールを送る。
ざっくりしたイメージだと「カウンターかポゼッションか」になりますが、少しニュアンスは異なります。
まとめ
プレーモデルとは「どんなサッカーをしたいか」という方針のようなもので、様々な要素によって設定されます。
各局面ごとに設定したプレーモデルを元に、選手は何がベストなプレーなのかを判断しますが、チームごとにプレーモデルが変わるため、ベストなプレーの基準も変わってしまいます。
プロ選手が移籍して、なかなか結果が出ない(評価されない)理由も、この「プレーモデル」の変化によるものだったりします。
同じサッカーというスポーツでも、プレーモデルによって価値観がガラリと変わってしまうので、この価値観を理解することが、非常に重要です。