状況判断が良い選手とはどんな選手でしょうか?
僕は、サッカーの場面ごとにおける、その瞬間瞬間に、ベストなプレーを選択できる選手と考えます。
ベストな選択をするために、必要な要素を解説していきたいと思います。
認知
まずスタートは状況を「見る」ことからです。
サッカーでは状況を認識するための情報を、ほぼ視覚から得ています。
音を聞いたり、触って感じたりすることもありますが、認知の大部分を「見る」という行為が占めています。
では、サッカーで見るべきものとは何でしょう?
まずは「ボール」「ゴール」それから「味方」「相手」そして「スペース」こんなところでしょうか。
そして大事なのは、これらの何を見るかになります。
ゴールの色を見て「きれいな白だなー」とか「ゴールポストが少しさびてるなー」とか思っても、意味はありませんし、相手の顔を見て「こいつイケメンだなー」と思っても仕方ありません。
相手の目線や、頭が下がる瞬間を見て、プレーを予測することはありますが、より細かい話になるので、ここでは割愛します。
まず意識するべきなのは、「位置」と「変化」になります。
「位置」とは、「方向」と「距離」のことです。
自分がボールを受けようとしているときに、マークしている相手選手がどの方向にいて、どれくらいの距離なのか。
それから、ゴールはどこにあるのか。(味方やスペースもです)
ゴールは動くことがないので、自分のいる場所と身体の向きに対して、「方向」と「距離」だけを確認しましょう。
「変化」を意識する必要はないので、状況の把握は比較的簡単です。
「変化」とは、どのように動いているかということで、どの方向に、どれだけのスピードで動いているかが、ポイントとなります。
先ほど例に挙げた相手選手(自分のマークについている選手)は、動いているのか、止まっているのか。
動いているなら、その「方向」と「スピード」を見ます。
味方やスペースについても同様で、まずは「位置」を確認し、次にその「変化」を見ます。
この「位置」と「変化」の確認を何度も繰り返し行い、刻一刻と変わる状況を把握していきます。
注意すべき点として、人は見ようと意識したものしか見えないので、何を見るべきか理解し、意識して「見る」ことが、非常に重要となります。
「位置」に関しては、何も伝えなくても見れる(意識できる)選手が多いですが、特に「変化」について意識しないと、なかなか気づくことができません。
予測
状況をしっかりと「見る」ことができたら、その情報を元に、次の状況を「予測」します。
「予測」とは、可能性を探る、と言い換えることができるかもしれません。
過去の似たような状況を元に、次の状況がどう変化する(変化しそう)なのか。
この時はこうなった、あの時はこうなった、じゃあ今回は・・・?
この経験を積み重ねていき、いくつかのパターンを考えておくことが「予測」となります。
今、という1枚の静止画から、何枚の未来を想像できるかが、予測のポイントとなります。
選択
予測した未来の状況を元に、自分が何をするか、何ができるかを考えることです。
何枚か描いた未来の絵に応じて、自分がプレーできる選択肢を考えておきます。
この選択肢が多ければ多いほど、安定感のある選手になれます。
相手が寄せてきたら、ファーストタッチで背後を取ろう、寄せてこなかったらシュートを打とう。
味方のパスが足下に来たらダイレクトでワンツーを狙おう、もしボールが浮いてたらコントロールして後ろに下げよう。
まずはプランAとプランBの2つからスタートして、プランC,Dと増えていけばいくほど、様々な状況に対応できる(安定感のある)選手になっていきます。
プレーの選択肢を、できるだけ多く考えておきましょう。
決断
選択したプレーを実行に移すことを決定する、ということです。
少し難しい表現になってしまいましたが、これは選手のポジションによっても傾向が分かれます。
例えば、FWの選手は比較的決断のタイミングが早く、中盤の選手はギリギリまで決断しない、と言われています。
これは「この状況ならこうやってシュートを打つ」とFWの選手が早めに決断してしまうのに対し、相手の状況をギリギリまで見ながらプレーを決断する、という競技上の特性が表れたものになります。
よく、判断が遅い選手と言われることがありますが、実際は「決断」のスピードが遅いという場合もあります。
自分が何をするべきか、どんなプレーをできるかの選択肢が分からず「選択」をできない選手もいる訳ですが、正しいプレーをしようとしたのに「決断」が遅くなってしまい、ミスになってしまう。
そこの差を理解することは、とても大切だと思います。
実行
決断したプレーを実行します。
多くの場合、目に見える結果としてこの部分が現れます。
今回のテーマは「状況判断」になりますが、状況判断と自分の能力によって、実行できるかどうかが決まることになります。
そして、「状況判断」は選手の頭の中で行われていることなので、結果として起きた「実行」の部分ではなく、「認知」「予測」「判断」「決断」どの部分にミスの原因があったかを探ることで、成長に繋がります。
どれだけ正確に蹴れる技術を持っていても、ゴールがどこにあるか分からなければ、シュートを打っても入りません。
相手選手が目の前にいることを分からなければ、シュートは相手にぶつかってしまいます。
ボールを扱う技術がいかに優れていたとしても、試合で活躍できるかどうかは別問題になります。
それは、サッカーというスポーツが「状況判断」なしに語ることのできないスポーツだからです。
スキルやフィジカルも大事ですが、「状況判断」するための能力もトレーニングを通して向上させていく必要があります。
冒頭で述べた「ベストなプレーを選択できる選手」を考える際に、ベストなプレーとは何なのか。
それを、次のテーマにしていきたいと思います。